法人保険の損金算入ルール完全ガイド|2019年改正後の4区分と30万円特例【2026年】
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山田ツール編集部目次
「保険料は全額損金になりますよ」
数年前まで、法人保険の営業の場でよく聞かれたフレーズです。しかし2019年(令和元年)の税制改正によって、このシンプルな話は通用しなくなりました。
法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2の改定により、定期保険や第三分野保険(医療・がん保険等)の損金算入ルールが抜本的に見直されました。最高解約返戻率という指標をもとに4段階で損金算入割合が決まる仕組みに変わり、いわゆる「全額損金の節税保険」は基本的に姿を消しました。
このガイドでは、現行の4区分ルールをわかりやすく整理したうえで、30万円特例の使い方、役員退職金積立との組み合わせ、注意点まで解説します。なお、法人保険の税務は個別性が高く、一般的な目安として参考にしていただいたうえで、最終的な判断は必ず税理士へ確認することを前提に読み進めてください。
最高解約返戻率とは何か
改正後のルールを理解するうえで最も重要な概念が「最高解約返戻率」です。
これは、保険期間中のある時点で解約した場合に受け取れる返戻金の最大額が、それまでに支払った保険料累計に対して何%になるかを示す数値です。保険会社が契約時に提示する設計書に必ず記載されています。
この数値が高い保険ほど「貯蓄性が高い(将来受け取れる金額が多い)」とみなされ、損金算入できる割合が小さくなる、というのが改正後のルールの基本的な発想です。
2019年7月以降の4区分ルール
2019年7月8日以降に契約した定期保険・第三分野保険には、以下の4区分に応じた損金算入割合が適用されます。
区分1:最高解約返戻率50%以下
原則として全額損金算入できます。支払保険料の全額をその期の損金として計上できます。貯蓄性が低い保険として取り扱われます。
区分2:最高解約返戻率50%超〜70%以下
保険期間の前半40%の期間が「資産計上期間」となります。
- 資産計上期間中:支払保険料の40%を資産計上、60%を損金算入
- 資産計上期間終了後:支払保険料は全額損金、かつ資産計上した累積額を残り期間で均等に取り崩して追加で損金算入
区分3:最高解約返戻率70%超〜85%以下
こちらも前半40%の期間が資産計上期間です。
- 資産計上期間中:支払保険料の60%を資産計上、40%を損金算入
- 資産計上期間終了後:区分2と同様に累積資産計上額を取り崩して損金算入
区分4:最高解約返戻率85%超
計算がより複雑になります。
- 当初10年間:「支払保険料×最高解約返戻率×90%」を資産計上(残りを損金)
- 11年目以降〜解約返戻率がピークを過ぎるまで:「支払保険料×最高解約返戻率×70%」を資産計上
- その後:資産計上終了、累積資産計上額を残期間で均等に取り崩し
返戻率が高いほど資産計上の割合が増え、当面の損金効果は限定的になります。
資産計上した保険料はどうなるか
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資産計上した累積額は、資産計上期間が終わった後の「取崩期間」として残り期間で均等に取り崩され、損金算入されます。
つまり、損金算入は「先送り」されているだけで、いずれ形を変えて損金になるという点が重要です。
解約時には、資産計上残高と実際の解約返戻金との差額が雑収入(解約返戻金が多い場合)または雑損失(少ない場合)として計上されます。
30万円特例の使い方と落とし穴
区分2(最高解約返戻率50%超70%以下)の保険に適用できる特例があります。
被保険者1人あたりの年換算保険料が30万円以下の場合、資産計上期間中も保険料の全額を損金算入できます(通常の区分2ルールでは資産計上40%が必要なところ)。
活用のポイント
役員や従業員を被保険者として、年間保険料が30万円以下に収まる保険を設計することで、全額損金の効果が得られます。
落とし穴:通算判定
30万円の判定は「同一被保険者に対する複数契約を合算」して行います。A保険が年25万円でも、同じ被保険者を対象にB保険が年10万円あれば合計35万円となり、A・B両方とも特例対象外になります。
複数の保険を加入している場合は必ず通算金額を確認してください。1円でも超えると特例が適用されなくなります。
役員退職金積立との組み合わせ
法人保険を節税目的で使う最も合理的な活用法が「役員退職金積立」との組み合わせです。
仕組みの流れ
- 在職中に保険料を支払い、資産計上・損金算入を継続
- 役員が退職するタイミングで保険を解約
- 解約返戻金を受け取ると雑収入(益金)が発生
- 同じ期に役員退職金を支払うと、退職金が損金算入され、解約益と相殺
- 退職金は受け取り側で退職所得の税制優遇が適用
退職金の支払いと解約のタイミングを合わせることが設計の核心です。退職の見込み時期から逆算して保険の加入時期・保険期間を設計する必要があります。
この「逆算設計」が法人保険の最も重要なポイントといえます。たとえば「10年後に引退予定」であれば、解約返戻率がピークを迎える時期が引退タイミングと重なる保険期間・保険料プランを選ぶ必要があります。保険会社の営業担当者だけでなく、税務面を踏まえた設計には税理士のサポートが不可欠です。
「節税」という言葉に潜む誤解
法人保険の損金算入は、厳密には「節税」ではなく「課税の繰り延べ」です。
損金算入した分だけ今期の法人税が減りますが、解約時に解約返戻金が益金(雑収入)として課税対象になります。単純に考えれば、長い目で見た税負担の総額は基本的に変わりません。
ただし、出口(退職金支払い)と解約を組み合わせることで実質的な税負担を軽減できるケースがあります。また、高い税率のフェーズから低い税率のフェーズへ課税を移す効果(税率差を利用した効率化)が成立するケースもあります。
いずれも個別の税務状況に強く依存します。「節税になる」という言葉だけで判断せず、具体的な数字でシミュレーションしてから決断することが重要です。
よくある質問
Q. 2019年7月以前の契約はどうなりますか?
2019年7月8日より前の契約(旧ルール加入分)は従来のルールが継続適用されます。新旧のルールが混在している場合は、それぞれ別々に処理します。
Q. 医療保険・がん保険にも同じルールが適用されますか?
定期保険と同様に、第三分野保険(医療・がん保険等)も2019年改正の対象です。最高解約返戻率に基づく4区分が適用されます。
Q. 全額損金になるケースはまだありますか?
区分1(最高解約返戻率50%以下)の保険は全額損金算入が可能です。また、30万円特例に該当する区分2の保険も、条件内であれば全額損金になります。ただし、返戻率が低い保険は貯蓄性が低く、退職金積立目的には向かないケースもあります。
Q. 長期平準定期保険・逓増定期保険の扱いは?
保険期間・被保険者年齢・保険料構造の要件に応じて、前払期間中に支払保険料の1/2〜3/4を資産計上するルールが適用されます。詳細は保険会社の設計書と税理士への確認が必須です。
Q. シミュレーターの結果だけで判断してよいですか?
シミュレーターは資産計上額・損金算入額・解約返戻金の目安を試算するためのツールです。実際の税務処理・保険設計の最終判断は、個別の事情を把握した税理士への確認が不可欠です。一般的な目安として活用してください。
損金算入額をシミュレーターで確認する
年間保険料・最高解約返戻率・保険期間を入力するだけで、資産計上額・損金算入額・取崩額の年次推移を試算できます。2019年税制改正後の4区分ルールに対応しています。
経営者の退職後の備えとしては、法人保険以外に小規模企業共済も有力な選択肢です。掛金の全額所得控除や貸付制度については小規模企業共済 完全ガイドをあわせてご覧ください。
法人保険を検討する際の注意点まとめ
最後に、法人保険の活用を検討する際に押さえておきたいポイントをまとめます。
保険あくまで保険として見る:死亡保障・就業不能保障など、本来の保険機能(保障)が事業ニーズに合っているかを先に確認する。節税効果だけを目的として加入しても、解約時に課税が発生するため期待通りにならないケースがあります。
設計書の数字を自分で理解する:最高解約返戻率・返戻金の推移・資産計上額の計算式は保険会社の設計書に記載されています。営業担当者の説明だけに頼らず、設計書を自分で読んで確認してください。
税理士との連携が必須:損金算入の区分判定・資産計上・取崩処理・解約時の益金処理は、毎期の会計・税務処理に直接影響します。加入前のシミュレーションと、加入後の毎期処理の両面で税理士と連携することが前提です。
出口戦略を先に決める:「いつ解約するか」「退職金はいくら出すか」が決まっていない状態での加入は、解約返戻金がそのまま益金として課税されるリスクがあります。加入前に出口の絵を描いておくことが法人保険活用の基本です。
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