フリーランス新法、KADOKAWAも勧告へ。施行から2年で見えてきた「摘発されやすい業種」と注意点【2026年最新】
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山田ツール編集部目次
2026年6月、公正取引委員会がKADOKAWAに対してフリーランス新法違反の勧告を出す方針であることが報じられました。雑誌製作を委託していたフリーライターやスタイリスト、イラストレーターに対し、報酬の支払期日などを書面で明示していなかったことが理由です。2024年11月の施行から1年半余りで、勧告事例は着実に積み上がっています。どの業種で、どんな違反が指摘されているのかを具体的に見ていきます。
フリーランス新法とは、あらためて
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス・事業者間取引適正化等法です。令和5年(2023年)4月28日に成立し、令和6年(2024年)11月1日に施行されました。個人が事業者として安定的に業務に従事できる環境を整えることを目的とし、取引条件の書面・電磁的方法による明示義務や、報酬の支払期日設定、ハラスメント対策などを発注事業者に義務づけています。取引適正化に関する規定は公正取引委員会・中小企業庁が、就業環境整備に関する規定は厚生労働省が執行を担う、いわば二つの省庁にまたがる法律です。
施行から2年弱の摘発の流れ
公正取引委員会の対応は、施行直後から段階的に強化されています。
- 2024年度(施行〜2025年3月):年次報告によると、着手した違反被疑事件は137件、指導を行った件数は54件
- 2025年3月28日:フリーランスとの取引が多いゲームソフトウェア業・アニメーション制作業等の45事業者に対し、契約書・発注書の記載や支払期日の定め方などについて是正を求める指導
- 2025年6月17日:施行後初めての勧告。光文社・小学館に対して勧告が行われ、社名が公表される
- 2025年6月25日、9月26日、12月5日:出版・映像・コンテンツ制作企業を中心に、合計6社への勧告が続く
- 2025年10月まで:放送業・広告業の事業者を対象とした集中調査により、128事業者に是正指導
- 2026年2月末時点:勧告の累計は8件
- 2026年6月:KADOKAWAへの勧告方針が報道される
数字を追うと、施行1年目は「指導」による是正が中心でしたが、2年目に入って勧告・社名公表の事例が明確に増えています。「まだ実例が少ないから大丈夫」という段階はすでに過ぎたと見るべきです。
なぜ違反がなくならないのか:認知度の低さという構造的な問題
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法施行前の2024年5〜6月に実施された調査では、発注事業者の54.5%、フリーランスの76.3%が、フリーランス新法の内容を「よく知らない」と回答しています。制度自体は施行されていても、現場に十分浸透しているとは言いがたい状況が、施行前の時点ですでに見えていました。
実際に指摘された違反の中身:光文社・小学館のケース
2025年6月17日に勧告を受けた光文社・小学館は、いずれも週刊誌・月刊誌・文庫本などを刊行する総合出版社で、ライター・カメラマン・ヘアメイク・デザイナーなど多様な職種のフリーランスに業務委託を行っています。取引しているフリーランスの規模は、小学館が約2,000人、光文社が約4,000人にのぼります。
違反が認定されたのは、この一部です。小学館は2024年12月の1か月間に191名、光文社は2024年11月〜2025年2月の間に31名のフリーランスに対し、業務委託時に業務内容や報酬額などの取引条件を明示していませんでした。公正取引委員会の調査によれば、違反と認定された取引の過半数は口頭での発注であり、メールやSNSで一部の条件が伝えられていた場合でも、報酬の支払期日そのものは示されていなかったケースが目立ちます。
両社とも法施行に合わせて社内研修や説明会を実施していましたが、公取委の調査に対しては「現場に意識が浸透していなかった」と説明したとされています。制度を知っていることと、日々の発注実務にその内容を落とし込めていることの間には、まだ距離があることを示す事例です。今回の勧告では、単なる是正だけでなく、取締役会での違反事実の確認や、従業員向け研修の実施など、再発防止のための社内体制整備が求められています。
放送・広告業界の指導事例
放送業界への指導事例では、番組制作や出演業務の委託において「役務の提供を受ける日」や「提供場所」を明示していなかったケース、CM制作において「検査完了日」を明示していなかったケース、知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確にしていなかったケースなどが指摘されています。共通しているのは、契約内容そのものが不当というよりも、「必要な事項を書面で明示していない」という手続き面の不備が中心になっている点です。
2025年12月10日、公正取引委員会はこうした調査を踏まえ、発注事業者が留意すべき点を新たに公表しました。その一つが、フリーランスの予定を確保していた業務委託を直前にキャンセルした場合、報酬相当額を支払わなければ、禁止行為である「不当な給付内容の変更」に該当する恐れがあるという見解です。契約書の明示義務だけでなく、キャンセル時の対応についても、あらためて確認しておく必要があります。
なぜコンテンツ・メディア業界に集中しているのか
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指導・勧告の対象を見ると、出版・放送・広告・ゲーム・アニメーションといったコンテンツ関連業種に集中しています。これは、フリーランスとの取引が特に多い業種を公正取引委員会が優先的に調査対象としているためです。2024年度には、問題事例の多い業種の発注事業者3万名を対象にした実態調査も実施されており、これをもとに集中調査の対象業種が絞り込まれています。逆に言えば、これらの業種以外の企業であっても、フリーランスへの発注が多ければ今後の調査対象になり得るということです。
取適法との関係を簡単に整理
2026年1月に施行された取適法(中小受託取引適正化法、旧下請法)とは、対象や趣旨が重なる部分があります。中小受託事業者がフリーランス(特定受託事業者)にも該当する場合、両方の法律に違反する行為があったときは、原則としてフリーランス新法が優先的に適用されます。発注側企業にとっては、どちらの法律が適用されるかにかかわらず、契約条件の明示と支払期日の遵守という基本部分を押さえておくことが共通の対策になります。
発注側企業が今すぐ確認すべきこと:チェックリスト
光文社・小学館の事例が示すとおり、社内研修を実施していても現場に浸透していなければ違反は起こり得ます。契約書のひな形だけでなく、実際の発注フローを次の観点で点検することをおすすめします。
- 口頭発注の有無:違反事例の過半数が口頭発注だったことを踏まえ、電話や対面での口頭発注が常態化していないか確認する
- 明示事項の網羅性:給付内容・報酬額・支払期日に加え、業種特有の項目(役務の提供を受ける日、提供場所、検査完了日など)が漏れていないか確認する
- メール・SNSでの一部明示:条件の一部だけをメールやチャットで伝え、支払期日が抜け落ちていないか確認する(光文社・小学館のケースで実際に指摘された類型)
- 知的財産権の範囲:譲渡・許諾の範囲を契約書に明記しているか確認する
- 支払期日の遵守:明示した支払期日どおりに、実際の支払いが行われているか、経理側の運用まで確認する
- キャンセル時の対応:直前キャンセルの際に報酬相当額を支払う運用になっているか確認する(2025年12月の公取委留意点)
- 現場への浸透度:研修を実施して終わりにせず、発注担当者が実際の案件でルールを守れているか、定期的にサンプルチェックする
特に最後の「現場への浸透度」は見落とされがちですが、光文社・小学館の事例が示すとおり、研修の実施と現場での実践は別問題です。ひな形整備だけで終わらせず、実際の運用まで確認することが実務上のポイントです。
フリーランス側が今できること
契約条件が書面で示されない、支払期日が曖昧なまま取引が進んでいるといった状況に心当たりがある場合、それ自体がフリーランス新法上の明示義務違反にあたる可能性があります。公正取引委員会や中小企業庁への相談・申出は、実際の指導・集中調査のきっかけにもなっています。発注元とのやり取りは、口頭だけでなくメールやチャットなど記録が残る形にしておくと、いざというときの根拠になります。
まとめ
フリーランス新法は、施行から1年半余りで、光文社・小学館・KADOKAWAといった具体的な社名が挙がる段階に入っています。指導・勧告の中心はコンテンツ・メディア業界に集中していますが、契約条件の明示と支払期日の遵守という基本部分は、業種を問わず共通の注意点です。「うちは対象になりにくい業種だから」と油断せず、フリーランスへの発注実務を一度点検しておくことをおすすめします。
