
介護休業給付金の完全ガイド【令和8年度版】支給額計算・93日活用法・申請手順・落とし穴まで
はじめに
親の介護が必要になったとき、多くの働く人が直面する最大の悩みは「仕事を辞めずに介護できるか」です。離職率の高さは社会問題化しており、厚生労働省の調査では年間約10万人が「介護離職」しています。
雇用保険には、介護のため休業した場合に賃金の67%を最長93日間支給する介護休業給付金という制度があります。月給30万円なら月約20万円、上限は¥532,200/月。非課税のため額面がほぼ手取りとなり、無給の介護休業中の生活を支える重要なセーフティネットです。
本記事は令和8年度(2026年)現在の介護休業給付金を、計算方法・93日活用戦略・申請手順・落とし穴・令和7年4月改正の影響まで完全網羅します。競合記事ではあまり扱われない**「失業給付との競合」「賃金支払い時の80%調整ルール」「3回分割のベストプラクティス」「同一家族複数回受給の制限」**も含め、実務に直結する解説をお届けします。
⚠️ 重要: 本記事は令和8年(2026年)5月現在の制度に基づきます。最新の通知・告示は厚生労働省・最寄りのハローワークでご確認ください。
1. 介護休業給付金とは — 雇用保険の家族介護支援制度
介護休業給付金は、雇用保険法第61条の4に基づき、家族の介護のために介護休業を取得した雇用保険被保険者に、休業開始時賃金日額の67%が支給される給付金制度です。
制度の目的
- 介護離職の防止(年間約10万人が介護離職という社会課題)
- 仕事と介護の両立を経済面から支える
- 介護負担による休業を「無給」ではなく「67%保障」へ
歴史的経緯
| 年 | 改正内容 |
|---|---|
| 平成7年(1995年) | 介護休業制度創設 |
| 平成11年(1999年) | 介護休業給付金 創設(40%支給) |
| 平成28年(2016年)8月 | 支給率を40%→67%に大幅引き上げ |
| 平成29年(2017年) | 分割取得可能(3回まで) |
| 令和7年(2025年)4月 | 雇用環境整備義務化、40歳到達時情報提供義務化 |
よくある誤解 — 「事業主が払ってくれる」
介護休業給付金は雇用保険(ハローワーク)から直接支給されます。会社は申請を代行するだけで、お金の出どころは雇用保険です。会社の経費とは別物である点を理解しておくことが重要です。
よくある誤解 — 「介護休暇でも給付金がもらえる」
給付金は介護休業のみ対象です。介護休暇(年5日の短期休暇)は別制度で、給付金支給はありません(Section 8で詳述)。
2. 受給対象者 — 雇用保険被保険者の要件
基本要件(無期雇用者)
✅ 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または労働時間80時間以上)ある月が、通算12ヶ月以上
「完全月」のカウント方法は厳密です。休業開始日の前日から1ヶ月ごとに区切り、病気・怪我・育児休業で30日以上賃金がなかった期間は2年計算から除外(最大4年まで延長可)されます。
有期雇用者の追加要件
✅ 上記に加えて、休業開始予定日から93日経過日 + 6ヶ月以内に労働契約が満了することが確定していないこと
つまり「あと半年で契約終了」が決まっている人は対象外となります。
受給対象にならない人
- ❌ 退職予定者(介護休業終了後の職場復帰を前提とする制度)
- ❌ 日雇い労働者
- ❌ 直近12ヶ月以上の被保険者期間が失業給付受給後の期間に不足する人
雇用形態は問わない
正社員・契約社員・パート・派遣・期間雇用—雇用保険に加入していれば対象。65歳以上の高年齢被保険者も受給可能です。
3. 対象家族の範囲 — 兄弟姉妹・孫まで含まれる
介護休業給付金の対象となる「介護家族」は、思いのほか広い範囲です。
| 続柄 | 対象 |
|---|---|
| 配偶者(事実婚含む) | ✅ |
| 父母(養父母含む) | ✅ |
| 子(養子含む) | ✅ |
| 配偶者の父母(養父母含む) | ✅ |
| 祖父母 | ✅ |
| 兄弟姉妹 | ✅ |
| 孫 | ✅ |
| 上記以外の親族 | ❌ |
複数の家族を同時介護する場合、対象家族それぞれに93日が認められます(父93日 + 母93日 = 最大186日)。また夫婦・兄弟で同じ親を介護する場合、それぞれが93日分の給付金を受給可能です。
4. 支給額の計算式 — 67%×賃金日額×支給日数
基本式
賃金日額 = 介護休業開始前6ヶ月の総支給額 ÷ 180
賃金日額 = min(max(賃金日額, 下限), 上限)
1支給単位給付額 = 賃金日額 × 30日 × 67%
「総支給額」は保険料控除前の額面で、賞与・ボーナスは除く。通勤手当・残業代等は含みます。
計算例: 月給30万円の人が30日休業
- 6ヶ月総支給額: 30万円 × 6 = ¥1,800,000
- 賃金日額: ¥1,800,000 ÷ 180 = ¥10,000
- 1支給単位給付額: ¥10,000 × 30 × 0.67 = ¥201,000
計算例: 月給100万円(上限適用)
- 賃金日額計算上: ¥1,000,000 × 6 ÷ 180 = ¥33,333
- 上限適用後: ¥17,740/日(令和7年8月の上限)
- 1支給単位給付額: ¥17,740 × 30 × 0.67 = ¥356,574
→ この計算は当サイトの介護休業給付金 計算機で月給を入れるだけで即算出できます。
5. 上限額¥532,200と毎年8月の改定
上限額¥532,200/支給単位(30日)は令和7年8月1日から令和8年7月31日まで適用されます。賃金日額の上限・下限は毎年8月1日に変更されるため、令和8年8月以降は改定が見込まれます。
令和8年度 月給別支給額一覧表
| 月給 | 賃金日額 | 1支給単位(30日) | 93日総額 |
|---|---|---|---|
| ¥150,000 | ¥5,000 | ¥100,650 | ¥311,515 |
| ¥200,000 | ¥6,667 | ¥134,007 | ¥415,355 |
| ¥300,000 | ¥10,000 | ¥201,000 | ¥623,100 |
| ¥400,000 | ¥13,333 | ¥267,993 | ¥830,877 |
| ¥500,000 | ¥16,667 | ¥334,007 | ¥1,035,422 |
| ¥800,000〜 | ¥17,740(上限) | ¥356,574 | ¥1,085,477 |
6. 賃金支払い時の調整ルール — 80%まで差額補填の仕組み
会社規定によっては、介護休業中も一部の賃金が支払われることがあります。この場合、給付金は次の3区分で調整されます。
Pattern 1: 賃金 < 賃金日額×30×13% → 全額支給
実支払賃金が13%未満なら、給付金は計算通り全額支給。
例: 月給30万円、休業中の支払賃金月¥30,000(10%)→ 給付金¥201,000(満額)
Pattern 2: 13% ≤ 賃金 < 80% → 80%上限まで差額調整
給付額 = (賃金日額×30×80%) − 実支払賃金
例: 月給30万円、休業中の支払賃金月¥80,000(26.7%) → ¥300,000×80% − ¥80,000 = ¥160,000
Pattern 3: 賃金 ≥ 80% → 不支給
実支払賃金が80%以上なら、給付金は**¥0**。
実務上の注意
「無給」なら全額支給、「30%支給」なら差額調整—会社規定を事前確認し、無給にしたほうが手取り合計が多い場合は無給を選択するパターンもあります。
7. 93日の活用戦略 — 3回分割を最大化するパターン
93日は最大3回まで分割可能です。この分割を戦略的に使うことで、長期間の介護対応が可能になります。
Pattern A: 一括取得(93日連続)
- 最もシンプル
- 介護施設探し・在宅介護環境構築の初期に集中
- 給付金は3支給単位(3ヶ月分)
Pattern B: 3回分割(30+30+33)
- 親の入院→退院→施設入所など段階的対応
- 各フェーズに必要な期間だけ取得
Pattern C: 緊急時+復職+緊急時(15+30+48)
- 短期間×2 + まとまった期間
- 急変対応に柔軟
分割取得時の注意
- 各回ごとに事業主への申し出が必要(2週間前まで)
- 給付金申請も各回ごと(申請期限: 各休業終了翌日から2ヶ月後の月末)
- 同一対象家族について通算93日が絶対上限(要介護度が変わっても延長不可)
93日を使い切った後は、介護休暇(年5日)・時短勤務・フレックス・テレワーク等の他制度を活用しましょう。
8. 介護休業 vs 介護休暇 — 給付金がもらえるのは前者のみ
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 期間 | 通算93日 | 年5日(対象家族2人で10日) |
| 分割 | 最大3回 | 1日単位・時間単位 |
| 給付金 | あり(67%) | なし |
| 申請 | 2週間前まで | 当日でも可 |
| 用途 | まとまった介護対応 | 通院付き添い・短時間対応 |
両者は別制度なので併用できます。日々の通院付き添いに介護休暇、入院対応にまとまった介護休業を組み合わせるのが最適です。
9. 失業給付との競合 — 受給資格決定済みの場合の制約
過去に雇用保険の失業給付(基本手当)や高年齢求職者給付金を受給したことがある人は、要件期間の計算に注意が必要です。
制約のルール
過去の受給資格決定日以前の賃金支払い実績は、介護休業給付金の「完全月12ヶ月」のカウントに含めることができません。
影響を受けるケース
- 一度退職して失業給付を受給後、再就職して数年経たないうちに介護休業
- 60歳以上で再雇用後、高年齢求職者給付金を受給した人
心配な場合は介護休業前にハローワークで雇用保険受給資格の履歴を確認しましょう。
10. 申請手続き — 休業終了の翌日から2ヶ月後の月末まで
基本フロー
- 介護休業の申し出: 開始2週間前までに事業主へ書面で
- 休業の取得: 実際に休業
- 休業終了後: 必要書類を整える
- 申請: 介護休業終了日の翌日から2ヶ月後の月末までにハローワークへ
例: 7月20日に介護休業終了 → 9月30日までに申請
必要書類
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(会社が作成)
- 介護休業給付金支給申請書(本人記入 + 会社印)
- 介護対象家族の状況を証明する書類(医師の診断書等)
- 被保険者本人の本人確認書類・振込口座情報
振込タイミング
申請から約1〜2ヶ月後に指定口座へ振込。休業中の生活費としては「終了後の振込」となるため、休業前に生活費の準備が必要です。
11. 非課税のメリット — 額面がほぼ手取りになる理由
介護休業給付金は所得税・住民税・雇用保険料すべて非課税(雇用保険法第12条)です。
月給30万円の場合の比較
| 通常の給料 | 介護休業給付金 | |
|---|---|---|
| 額面 | ¥300,000 | ¥201,000 |
| 所得税 | 約¥7,000 | ¥0 |
| 住民税 | 約¥16,500 | ¥0 |
| 社会保険料 | 約¥42,000 | ¥0(別途発生) |
| 手取り | 約¥234,500 | 約¥201,000 |
給付金の手取り換算は**月給に対して約67%**ではなく、**手取りに対して約86%**に相当します。
⚠️ 注意: 社会保険料(健康保険・厚生年金の従業員負担分)は給付金から控除されませんが、休業中も支払い義務があります。会社から請求されるか給与天引きで支払うため、実質手取りは想定より少なめになる場合があります。
12. 令和7年4月施行改正 — 40歳到達時情報提供義務化
令和7年(2025年)4月1日施行の改正で、以下が事業主に義務化されました。
1. 40歳到達時の情報提供義務
会社は従業員が40歳に到達した年度に、介護休業制度・給付金制度・その他両立支援制度の情報を提供する義務があります。
2. 雇用環境整備義務
- 介護休業に関する研修の実施
- 介護休業に関する相談体制の整備
- 自社の介護休業取得事例の収集・提供
- 介護休業取得促進方針の周知
3. 個別の意向聴取
家族の介護に直面した従業員に対して、会社は介護休業等の意向を聴取・配慮する義務があります。
改正の意義
「制度はあるが知らない」「使いにくい」が課題だった介護休業制度を、情報提供と環境整備で利用しやすくすることが目的です。
13. 落とし穴・注意点
落とし穴 1: 退職予定者は対象外
介護を理由に退職するつもりで介護休業 → 給付金不支給。「復職前提」が制度の絶対条件です。
落とし穴 2: 同一家族の93日を使い切ったら復活なし
要介護度が変わっても、再度の93日は付与されません。93日は対象家族につき一生分が上限です。
落とし穴 3: 賞与は賃金日額計算に含めない
ボーナスが多い人は、月給換算より給付額が少なくなります。
落とし穴 4: 申請期限の厳守
休業終了翌日から2ヶ月後の月末を1日でも過ぎると申請不可(時効)です。
落とし穴 5: 就業日数10日超は不支給
1支給単位(30日)あたり就業日数が10日を超えると、その月分は支給されません。「ちょっと出社」が積み重なって10日超になるケースに注意が必要です。
落とし穴 6: 社会保険料は別途発生
給付金は67%ですが、社会保険料(健保・厚年)は通常通り発生します。給付金からは控除されず、会社から請求 or 給与天引きで支払うため、実質手取りは想定より少なめになることがあります。
14. 実例 — 4つのケーススタディ
Case 1: 月給25万円・30日休業・無給
- 賃金日額: ¥250,000×6÷180 = ¥8,333
- 1支給単位給付: ¥8,333×30×67% = ¥167,493
Case 2: 月給40万円・93日休業・無給
- 賃金日額: ¥13,333
- 1支給単位給付: ¥267,993
- 93日(30×2 + 33日端数)総額: 約 ¥831,000
Case 3: 月給100万円・60日休業(上限適用)
- 賃金日額: 上限¥17,740
- 1支給単位: ¥356,574
- 60日(30×2単位)総額: ¥713,148
Case 4: 月給30万円・30日・休業中に¥80,000賃金支払いあり
- 通常給付額: ¥201,000
- 賃金支払率: 80,000/300,000 = 26.7%(13〜80%区分)
- 調整後: ¥300,000×80% − ¥80,000 = ¥160,000(¥41,000減)
15. まとめ
- 介護休業給付金 = 雇用保険から**休業開始時賃金日額×67%**が支給される制度
- 通算93日・最大3回分割(同一対象家族につき)
- 上限**¥532,200/支給単位**(令和7年8月改定、毎年8月変動)
- 非課税で額面≒手取り(社会保険料は別途)
- 対象家族は配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫と広い
- 賃金支払い時は80%上限まで差額調整
- 介護休業 ≠ 介護休暇(給付金は前者のみ)
- 令和7年4月改正で40歳到達時情報提供義務化・雇用環境整備義務化
- 退職予定者は対象外、復職前提
- 申請期限は休業終了翌日から2ヶ月後の月末
正確な給付額試算は、介護休業給付金 計算機で月給を入れるだけで即算出できます。
⚠️ 再掲: 本記事は令和8年(2026年)5月現在の制度に基づきます。最新情報は厚生労働省・最寄りのハローワークでご確認ください。
よくあるご質問
介護休業給付金の支給率は何%ですか?
休業開始時賃金日額の67%です。1支給単位(30日)あたりの上限は¥532,200(令和7年8月改定)で、毎年8月1日に改定されます。賃金日額の上限は¥17,740/日(令和7年8月〜)です。
パートやアルバイトでも受給できますか?
はい。雇用保険に加入していて、休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が通算12か月以上あれば、雇用形態を問わず受給可能です。65歳以上の高年齢被保険者も対象です。
93日を3回に分割できますか?
はい。通算93日の範囲内で最大3回まで分割取得できます。各回ごとに事業主への申し出(2週間前まで)と、休業終了後の給付金申請が必要です。同一対象家族について通算93日が絶対上限です。
介護休業給付金に所得税はかかりますか?
かかりません。雇用保険法第12条で非課税と規定されています。所得税・住民税・雇用保険料のいずれも課税されず、額面がほぼ手取りになります。なお、社会保険料(健康保険・厚生年金)は休業中も別途発生します。
申請の期限はいつまでですか?
介護休業終了日の翌日から2ヶ月後の月末までです。例えば7月20日に休業終了なら9月30日が期限です。期限を過ぎると時効で請求権が消滅するため注意が必要です。
退職を予定している場合でも受給できますか?
できません。介護休業給付金は休業終了後の職場復帰を前提とした制度です。退職予定者は支給対象外となります。
同じ親について93日を使い切った後に再度介護が必要になったら?
給付金の再受給はできません。93日は同一対象家族につき一生分が上限で、要介護度が変わっても延長されません。介護休暇(年5日)・時短勤務・フレックス・テレワーク等の他制度を活用してください。
介護休業と介護休暇はどう違いますか?
介護休業は通算93日まで取得でき給付金(67%)が支給されます。介護休暇は年5日(対象家族2人で10日)の短期休暇で給付金支給はありません。両者は別制度なので併用できます。日々の通院付き添いに介護休暇、まとまった介護期間に介護休業を組み合わせるのが最適です。