
介護記録の書き方 — SOAP形式と避けたい表現の完全ガイド【令和8年度現在】
介護記録は介護保険法・運営基準で義務付けられた重要書類です。しかし「どう書けばいいかわからない」「禁止用語を使ってしまわないか不安」と悩む介護職員の方は少なくありません。
本記事では、新人介護職員から事業所管理者まで使える、介護記録の書き方を実践的に解説します。SOAP形式・5W1Hの基本、場面別の文例、避けるべき表現、保存期間まで完全網羅します。
なぜ介護記録が重要か
介護記録は単なる業務日誌ではありません。以下の3つの重要な役割があります。
1. 法的義務
介護保険法と各サービスの運営基準により、サービス提供のたびに記録が義務付けられています。記録がない場合、介護報酬の返還を求められる可能性もあります。
2. ケアの質向上
利用者の状態変化、対応の効果、課題などを記録することで、ケアプランの見直しやチームでの情報共有が可能になります。
3. 事故・トラブル時の証拠
転倒、けが、家族とのトラブルなど、万が一の際の客観的記録として重要な役割を果たします。「言った/言わない」のトラブル防止にもつながります。
SOAP形式とは
SOAPは介護・医療現場で広く使われる記録形式です。4つの頭文字を取った形式で、情報を構造化して書きます。
| 記号 | 項目 | 意味 | 記入例 |
|---|---|---|---|
| S | Subjective | 利用者・家族の発言や訴え | 「足が痛い」との訴えあり |
| O | Objective | 観察した客観的事実・数値 | 右足首に腫脹あり、バイタル正常 |
| A | Assessment | 情報を分析した評価・判断 | 転倒の影響が疑われる |
| P | Plan | 今後の対応・計画 | 看護師へ報告、冷却処置 |
SOAP形式の利点
- 情報が整理される — 主観・客観・評価・計画が明確に分離
- 多職種で共有しやすい — 看護師・医師・ケアマネとの連携がスムーズ
- ケアの根拠が明確 — なぜその対応をしたか追跡可能
SOAP形式の例
``` S: 「気持ち悪い」との訴えあり。 O: 13:00 食後30分後に嘔吐1回。バイタル → 体温36.8℃、血圧130/80、SpO2 98%。腹部の腫脹なし。 A: 一過性の嘔吐の可能性。脱水のリスクあり。 P: 経口補水を勧め経過観察。看護師に連絡、症状再発時は再評価。 ```
5W1H形式の使い分け
5W1Hはより簡潔な記録に向いています。緊急事案や時系列の正確性が重要な場面で使われます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| When いつ | 14:30 |
| Where どこで | 食堂 |
| Who だれが | 利用者本人 |
| What なにを | 食事中にむせ込み |
| Why なぜ | 嚥下機能低下の可能性 |
| How どのように | 食事中断、水分摂取で改善 |
SOAP vs 5W1H の選び方
| 場面 | おすすめ形式 |
|---|---|
| 日常の介護(食事・入浴・排泄) | シンプル形式 or 5W1H |
| 体調変化・症状の訴え | SOAP |
| 転倒・事故・ヒヤリ | 5W1H + 追加観察 |
| カンファレンス報告 | SOAP |
| 月次まとめ | 自由記述 + SOAP併用 |
書く際の3つのポイント
1. 客観的に書く
「〜だった」「〜と思う」ではなく、見た・聞いた・測定した事実を記録します。
❌ 悪い例: 「今日は元気そうだった」 ✅ 良い例: 「歩行も普段通り、笑顔で職員と会話されていた」
2. 5W1Hを意識する
「いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように」を明確にします。これは特に事故記録で重要です。
❌ 悪い例: 「転倒があった」 ✅ 良い例: 「14:30、食堂入口にて転倒。床に座り込み、外傷なし、バイタル安定」
3. 利用者の言葉を引用する
利用者の発言は「」(カギ括弧)で囲み、評価や解釈と分けて記録します。
❌ 悪い例: 「足が痛いみたいだった」 ✅ 良い例: 「『足が痛い』との訴えあり。右足首に腫脹を確認」
避けるべき表現リスト
介護記録には「絶対に使ってはいけない表現」があります。法律違反になる場合や、家族・行政との信頼を損なう場合があります。
1. 侮蔑的表現 (絶対NG)
| NG例 | 推奨表現 |
|---|---|
| 「ボケ」 | 「認知症の方」「物忘れがある」 |
| 「徘徊」 | 「歩き回られる」「一人で外出される」 |
| 「問題行動」 | 「BPSD」「不安からの行動」 |
| 「寝たきり」 | 「ベッド上で過ごす時間が長い」 |
2. 命令的・上から目線 (NG)
| NG例 | 推奨表現 |
|---|---|
| 「させる」 | 「していただく」「促す」 |
| 「やらせる」 | 「お声かけする」 |
| 「してやる」 | 「お手伝いする」 |
3. 医学的判断 (介護職は記録不可)
介護職が「診断」「治療」と書くと医師法違反になる可能性があります。
| NG例 | 推奨表現 |
|---|---|
| 「肺炎の診断」 | 「呼吸苦の訴え、看護師へ報告」 |
| 「治療を行った」 | 「対応した」「ケアを実施」 |
4. 主観的評価 (記録に不要)
| NG例 | 推奨表現 |
|---|---|
| 「かわいい」 | 客観的な観察事実を記載 |
| 「可哀想」 | 表情・発言など事実を記載 |
| 「やっぱり」 | 具体的な根拠を記載 |
場面別の文例 — 即使える短文集
食事
``` 12:00 昼食を提供。主食7割、副食5割摂取。むせ込みなく自力摂取できていた。 ```
入浴
``` 14:00 一般浴を実施。全身洗浄を一部介助で行う。湯温40度、入浴時間15分。バイタル → 異常なし。 ```
排泄
``` 10:30 トイレへ誘導。立ち上がり・着脱を一部介助。排尿あり、性状異常なし。 ```
服薬
``` 8:00 朝食後の薬を手渡し介助。水でゆっくり服用、残薬なし確認。 ```
バイタル測定
``` 9:00 バイタル測定。体温36.6℃、血圧128/78、脈拍72、SpO2 98%。異常なし。 ```
転倒・ヒヤリ
``` 15:30 居室前でヒヤリ報告。立ち上がり時のふらつき。外傷なし、バイタル正常。ヒヤリハット報告書作成。 ```
法的義務 — 保存期間と書類管理
保存期間
介護保険法に基づき、サービス完結日から 原則2年間 の保管が義務付けられています。ただし、市区町村の条例で 5年間 とされる場合もあります。事業所所在の市町村にご確認ください。
保存形態
紙でも電子でも構いません。ただし以下の要件を満たす必要があります。
- 改ざんできない仕組み(電子の場合)
- いつでも閲覧・印刷できる状態
- バックアップ(電子の場合)
個人情報の扱い
利用者情報を含む書類です。施錠管理、アクセス制限、廃棄時のシュレッダー処理など、個人情報保護の観点でも厳格な管理が必要です。
テンプレートで時短
介護記録は毎日多数書く業務です。場面ごとのテンプレートを準備しておくと、新人スタッフでも均質な記録を素早く作成できます。
当サイトでは無料の介護記録テンプレートジェネレーターをご用意しています。サービス種別・場面・利用者状況を選ぶだけで、SOAP・5W1H・シンプル形式の文例を即生成。禁止用語チェッカーも搭載しています。
まとめ
- 介護記録は法的義務 + ケアの質向上 + 事故時の証拠の3つの役割
- SOAP: 主観S・客観O・評価A・計画P で構造化記録
- 5W1H: 緊急時や事故記録に向く
- 客観的に書く・5W1Hを意識・利用者の言葉を引用 が3つの基本
- 侮蔑的・命令的・医学判断・主観的 な表現は避ける
- 保存期間は原則2年(自治体により5年)
- テンプレート活用で時短 + 品質均一化
事業所ごとの記録基準もあわせて遵守し、利用者・家族・チームに信頼される記録を心がけましょう。
FAQ
Q. 介護職が「診断」と書いてもいい? A. いいえ。医師法により医師以外が診断を下すことは禁じられています。「〜の可能性」「〜の訴えあり、看護師へ報告」などの記載に留めてください。
Q. 主観的な感想は一切書いてはいけない? A. 観察事実と完全に分けるなら可。例: 「ご機嫌の様子(発言: 『今日は気分がいい』との発言あり、笑顔で会話)」のように、主観と客観を明示すれば可。原則は客観事実中心です。
Q. 認知症の方の行動はどう記録する? A. 「徘徊した」ではなく「14時から30分間、ホールを行き来していた」のように、観察した具体的事実を記録します。BPSDの記録は症状・きっかけ・対応を時系列で記録すると効果的です。
Q. 家族へ連絡したことは記録する? A. はい、必ず記録します。日時・連絡相手・伝えた内容・先方の反応を時系列で明記します。
Q. テンプレートをそのまま使っていい? A. テンプレートは参考用です。実際の利用者の状況に応じて加筆・修正の上、事業所の記録基準に従ってご使用ください。
よくあるご質問
介護職が「診断」と書いてもいい?
いいえ。医師法により医師以外が診断を下すことは禁じられています。「〜の可能性」「〜の訴えあり、看護師へ報告」などの記載に留めてください。
主観的な感想は一切書いてはいけない?
観察事実と完全に分けるなら可。例:「ご機嫌の様子(発言:『今日は気分がいい』との発言あり、笑顔で会話)」のように、主観と客観を明示すれば可。原則は客観事実中心です。
認知症の方の行動はどう記録する?
「徘徊した」ではなく「14時から30分間、ホールを行き来していた」のように、観察した具体的事実を記録します。BPSDの記録は症状・きっかけ・対応を時系列で記録すると効果的です。
家族へ連絡したことは記録する?
はい、必ず記録します。日時・連絡相手・伝えた内容・先方の反応を時系列で明記します。
テンプレートをそのまま使っていい?
テンプレートは参考用です。実際の利用者の状況に応じて加筆・修正の上、事業所の記録基準に従ってご使用ください。